自分の中がこたろうでいっぱいになると
あたしはいちいちベランダに出て
空を見上げている。
青空だったり月夜だったりするのが
いいけれど、どよどよの曇天でも
やっぱり毎日そうしている。
もちろんそれは次の世のイメージが
星だ虹だ天だ羽だなんだと
空につながるキーワードに
縛られているせいもあると思う。
だけど自分が子供の頃に亡くなった
祖父母や叔母を想う時にはしなかった。
その場でじっと思い出すだけだった。
あたしは空を見上げるようになった
タイミングをハッキリ覚えている。
そこそこ長く生きていると
もう二度と会うことのできない
友人・知人・顔見知りが増える。
老衰、病死、事件、事故、自死、被災、
順番を守って逝く人、逝かない人、
大往生だったと笑顔で見送られる人、
生きたいのに生きられず惜しまれる人、
突然居なくなって穴を開けていく人、
いろんな別れがあった。
中でも友人Tの死は衝撃だった。
近いうちに会おうやと言って
何度も電話のやり取りをしていたのに
実現しないうちにいなくなった。
Tさんは当時ハマりにハマっていた
スカイダイブのパラシュート事故で逝った。
システムはよくわからないけど、
機材は自前じゃなく、1日数回飛ぶ度に
違うパラシュートがまわってくるそうで、
あの日も1本目で自分が整備し終えたのとは
違うのを背負って2本目を飛んだらしい。
それまで空を飛ぶ楽しさを何度も何度も
熱く語られてきたし、自分のやることに
後でケチをつけるような人ではなかったので、
その当時(ご家族には申し訳ないけど)
Tさんきっと本望だって言ってる。と思った。
やべ!おいマジか!?ってなって、
だけど結局受け入れて覚悟して
Tさんらしくかっこいい心構えで
逝ったんじゃないかと思っている。
その日その時間あたしはたまたま
浜の公園でゴロゴロ過ごしていて、
大の字になって青空を見上げてた。
昼寝をするためだったけど、
ひどい胸騒ぎでちっとも眠れなくて
ものすごくザワザワした気持ちで
飛行機とか数えてた。
あたしはTさんが空で亡くなってから、
空を見上げるようになってる。
今あたしの上空はこたろうばっかりになってるけど、
昨日ふと「嗚呼これってTさんキッカケだわ」って
思い出して、これを書いてる。
結構年が離れてた気がするけど、
いくつだったか思い出せない。
でもとっくにあたし追い抜いてるなぁ。
Tさんにもらった形見はうちにいくつもある。
こたろうもあれこれ見覚えがあるはず。
こたろう。
そっちでTさん見つけて絡みな。
マジで超いいにーちゃんだから。
すみません。
少々重たいネタになっちゃった。